大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和35年(ワ)12号 判決

主文

当事者参加人等の請求を棄却する。

原告に対し被告錦二は別紙目録附属図面(イ)、(ロ)記載の各建物を収去し、被告すうは別紙第二目録記載の建物より、被告徳は別紙目録附属図面(ロ)記載の建物より各退去し、被告錦二、被告徳は同第一目録記載の土地上の植樹等一切の物件を撤去して被告等は右の土地を明渡し且つ連帯して昭和二十四年十月十九日以降昭和三十二年十二月三十一日までは月金千五百円、昭和三十三年一月一日以降右土地明渡済に至るまでは月金四千百五十六円の割合による金員を支払わねばならない。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用中当事者参加に関する部分は当事者参加人等の負担とし、その余の部分は被告等の連帯負担とする。

事実

原告は金員支払請求の部分につき被告等は原告に対し連帯して昭和二十四年十月十九日以降右土地明渡済に至るまで月金四千百五十六円の割合による金員を支払わねばならない。とする外は主文と同旨の判決(但し当事者参加の訴訟費用の点を除く。)及び担保を条件とする仮執行の宣言を求め、請求の原因として、一、原告は別紙第一目録記載の土地を水野録治郎より買得し(但登記簿上は昭和二十三年八月二十二日売買、昭和二十五年三月二十七日受付第一二一八号所有権移転登記)、昭和二十二年二月二十七日別紙第二目録記載の建物の建築届出をなし、同年九月十六日建築調査済、昭和二十五年二月二日受付第四三七号をもつてその保存登記をなし共に原告の所有物件である。二、被告錦二は当時原告の夫たりし者、被告徳は右錦二の先妻の子、被告すうは原告の養母で被告錦二に迎合しこれと行動を共にしている。原告は昭和二十四年十月十八日被告錦二の虐待に堪えかねて家出をなし昭和三十五年九月二十八日原告の請求通りの離婚の判決がなされ、同判決は昭和三十六年一月十一日確定した。三、右の如き身分関係から被告すうは右の建物に勝手に入居したままであり、右の土地上には被告錦二が別紙目録附属図面記載(イ)、(ロ)の各建物を無権原、無許可、無届にて不法建築をなし、被告錦二、被告徳は右(ロ)の建物に入居し、被告錦二、被告徳等は右地上に植樹、生垣等の物件を所有しもつて被告等は共謀して右の土地の明渡を妨害している。勿論原告は被告等に対し未だ曽つて原告所有の右の土地、建物を賃貸その他使用収益をすることを許諾したことはなく地代も家賃も受取つてはいない。四、右の原告の所有する土地、建物の賃料相当の損害金は月金四千百五十六円である。五、よつて原告は被告錦二に対し別紙目録附属図面(イ)、(ロ)の各建物の収去、被告すうに対し別紙第二目録記載の建物よりの退去、被告徳に対し別紙目録附属図面(ロ)記載の建物よりの退去、被告錦二、被告徳に対し右の土地上の植樹等一切の物件の撤去及び被告等に対し右の土地の明渡と原告と被告錦二が事実上夫婦別れをした日の翌日である昭和二十四年十月十九日以降右の土地明渡済に至るまで右の月金四千百五十六円の割合による原告所有土地、建物の賃料相当の損害金の連帯支払を求め、当事者参加人等の請求を棄却する。との判決を求め、答弁として参加の請求の原因たる事実一の中登記の点のみを認めその余の点を否認し、同二の身分関係及び金十万円受領の点を認め、その余の点を否認し、同三の点を否認した。

被告等は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、答弁として、請求の原因たる事実一の中右の土地、建物がいずれも原告名義に登記せられていることを認め、原告の所有であることを否認し、同二の中身分関係の点を認め、同四の点を争い右の土地建物は被告錦二の所有である。と述べ、当事者参加人等の請求の原因たる事実を認めてその請求を認諾した。

当事者参加人等は原告及び被告中山錦二は別紙第一目録記載の土地及び同第二目録記載の建物は参加人等及び中山健、中山勇、中山勝二、近藤美恵子の共同所有であることを確認し、原告はその所有権移転登記手続をせよ。被告等は参加人等に対し右建物から退去し明渡をなせ、訴訟費用は原告及び被告等の負担とする。との判決と保証を条件とする仮執行の宣言を求め、参加請求の原因として一、原告は別紙第一目録記載の土地につき昭和二十五年三月二十七日名古屋法務局受付第一二一八号をもつて売買を登記原因とする所有権移転の登記を受け、同第二目録記載の建物につき昭和二十五年二月二日名古屋法務局受付第四三七号をもつて所有権保存登記をなしているが右土地、建物はいずれも被告錦二の所有に属し原告がこれらを取得乃至建築したものでない。二、原告は参加人等の実母であり、被告錦二は参加人等の実父で原告の夫たりし者であるが昭和二十四年十一月以来事情あつて原告は末子美恵子を連れて別居生活をすることになり、被告錦二はその当時原告に金十万円(現時の金五百万円乃至一千万円相当)の現金を与え、爾後財産上は勿論その他一切の要求をしない誓の下に所謂縁を切つたのである。三、当時被告錦二は事業上の失敗によつて相当多額の負債があつたため金一万六千七百二十五円の代金全額を支払つて水野録治郎から譲受けた右の土地及び自ら建築した右の建物を自己名義とすることを躊躇していたので右の事実上の協議離別の日にこれら土地建物を夫婦間の七名の子供等に贈与すること並びに適当の時期にそれぞれその共有登記手続をなして与えることを協議し当事者参加人律子及び同要等は七名の子供等を代表して受益の意思表示をなし原告は安心して家を去つた。即ち右建物については被告錦二が原告と離別した三ヵ月後に原告名義に保存登記手続をなし、土地については離別の一年三ヶ月前に移転登記を受けたもので離別条件の贈与でないことは明白に推知し得べく離別の際子供等七名に贈与する旨の約束の下に一応の保存方法として原告名義にしたのに過ぎない。四、よつて当事者参加人等は原告及び被告錦二に対し別紙第一目録記載の土地及び同第二目録記載の建物は参加人等及び中山健、中山勇、中山勝二、近藤恵美子の共同所有であることの確認を、原告に対しその所有権移転登記手続を、被告等に対し右の建物からの退去と明渡を求める。と述べた。

証拠(省略)

別紙

第一目録

名古屋市北区石園町二丁目二十四番

一、宅地  百九十四坪

第二目録

名古屋市北区石園町二丁目二十四番地上

家屋番号第一番の二

一、木造瓦葺二階建居宅

建坪  二十三坪一号六勺

外二階  八坪七合五勺

別紙

名地裁昭和三五年(ワ)第一二号

昭和三六年(ワ)第一六八一号

凡例 ABCDを各直線で囲んだ土地  本件明渡を求める土地

斜線部分の建物         原告が明渡を求める家屋番号

第一審の二の建物

訴外株式会社大垣共立銀行の所有土地

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例